「海外でレコーディングしました」──ミュージシャンのプロフィールや作品紹介でよく見かけるこの言葉。
単なる話題づくり?それとも本当に音が違う?
本記事では、海外レコーディング の何が日本と違うのかを、音響・文化・制作環境・心理的効果の観点から解説します。
音が違う理由は“空間”と“人”
1. スタジオの音響特性
海外の老舗スタジオ(例:アビーロード、オーシャン・ウェイ)は、空間設計・残響・マイキング環境が極めて優れている。
日本のスタジオが高スペックでも、空間の鳴り方や空気感が違うため、録音される音に独特の深みが出る。
2. エンジニアの感性
海外のエンジニアは、音を“削る”より“活かす”方向でミックスする傾向が強い。
日本では細部まで整える文化がある一方、海外では大胆なEQやリバーブ処理、ミュート判断が行われることも。
「この音は要らない」と勝手にミュートするエンジニアもいるが、それが結果的に良い方向に作用することもある。
制作環境の違い
項目 | 日本 | 海外 |
---|---|---|
スタジオ文化 | 時間厳守・効率重視 | クリエイティブ優先・柔軟 |
機材 | 最新機材が揃っている | ヴィンテージ機材が豊富で“味”がある |
制作スタイル | プリプロ重視・打ち込み中心 | 生演奏・セッション型が多い |
コミュニケーション | 丁寧・遠慮がち | 率直・即興的・感情的なやりとりも歓迎 |
海外レコーディングの“副産物”
・日常からの隔離:日本の喧騒やスケジュールから離れ、創作に集中できる
・文化的刺激:街の空気、人のノリ、食事、すべてがインスピレーションになる
・話題性・ブランディング:アーティストとしての“格”や“物語”を強化できる
・現地ミュージシャンとの化学反応:その場でしか生まれないグルーヴや呼吸感が作品に宿る
では、今の時代に海外で録る意味は?
・技術的には、日本でも高品質な録音は可能
・しかし、“空気ごと録る”という感覚は現地でしか得られない
・ファイル交換やリモート制作が進んでも、フェイス・トゥ・フェイスの演奏には独特の熱量がある
まとめ
海外レコーディング は、単なる“音の違い”ではなく、空間・人・文化・心理のすべてが音に影響する体験です。
それは、ミュージシャンにとっての旅であり、挑戦であり、記憶に残る創作の場。
「音が違う」のではなく、「音の背景が違う」──それが、海外レコーディングの本質かもしれません。
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